夏の過ごし方

やめていた煙草を吸った。一年弱やめていたが生活に変化はなかった。寧ろ吸ってしまった今別段に煙草が美味いというわけでもなかった。夏も本番になりだして周りは何処へ行こうか計画を立て始めている。何もやる気が起きない。薄々感づいていたがどうやら俺は夏に執着がないらしい。最近はとても暑くて唯一それだけが夏であることを夏たらしめる。お金がなくなってきたので自炊し始めた。料理というものは分量や時間を守って作る能力よりも手際の良さがより浮き彫りになる。料理上手な人は作りながら使い終わった皿やらなんやらを洗いに出したり片し始めるらしい。俺は要領が悪いのでキッキンが粉まみれになった。今日の最高気温は36℃だった。トンカツを揚げた。汗まみれになった。トンカツは美味いくせに調理過程がラクでよく作る。というのも俺は1つのモノを極めるために幾度となく繰り返し反復して習得する性であるため今週はトンカツを揚げに揚げた。食欲が余りなくても義務のように作っては食べた。トンカツのことなら私に任せなさい。

 


余りにも暑すぎるためクーラーをつけてサナトリウムのような生活を送っている。最近たくさんCDや漫画を買って時間を緩やかに埋めている。この前大阪で大きめの地震があったばかりなのに部屋はモノで溢れて返っている。本やレコードの下敷きになって死ぬのも悪くないと本気で思い始めた。これは誰も気づいていないことなんだろうけど、部屋の中心に本棚を配置することによってかなり文化レベルが上がる。ソファに座りながら手を伸ばせば文化の集約地に触れることができる。そもそも本棚を壁際に配置することを美徳としているのがおかしい。こうして今まで積んでいた本などかなり消費できているような気がする。

 


買ったものたちのラインナップとしてピロウズ一式ゆらゆら帝国一式ナンバーガールオモイデシリーズその他CDうる星やつらちびまる子ちゃんセーラームーン神の左手悪魔の右手を全巻買った。本棚を部屋の中心に配置してから本を読む量が増えたが単純に集中力が落ちているのか読むスピードが前よりも遅くなった。リハビリのためにも漫画を読んでいるが本当にスピードが落ちた。ちびまる子ちゃんを一日かけて4冊しか読めなかった。このままではインターネットにアクセスすることもままならなくなってしまう。セーラームーンに関しては一時期頭のおかしくなったときにアニメシリーズを全制覇しているのでするすると読めた。俺の好きな無印アニメの24話はアニメオリジナルであることを知った。この回は大坂なると悪の組織の幹部のネフライト様回である。ネフライト様は現実世界からも月野うさぎ達を制圧するべく偽名で彼女らに近づくが偶然月野うさぎの友達である大坂なると恋に落ち最終的には彼女の献身な愛の力により正義の心を取り戻し命を落とすのである。この回はマジで最高なのでセーラームーンに興味ある人は是非見てみるといい。セーラージュピターである木野まことも2巻で登場するわ展開がアニメに比べるとかなり早い。私の推しであるセーラーマーズこと火野レイのキャラクター像も微妙にアニメとは異なり読んでいて新しい発見が多々ある。

 


ナンバーガールを学生時代通らず過ごしたので完全に後追いであるがオモイデシリーズを狂ったように聞いている。サッポロ、シブヤ、記録シリーズと全て手に入れたので音源には当分困ることは無さそうだ。ピクシーズやギャングオブフォーの日本的解釈としてかなり上手くいっていると思う。向井秀徳の詩のポエジーさはどこから生まれるのだろう。ナンバーガールの歌詞は概念としての夏、ひいてはインターネット以降の夏(白いワンピース、少女、麦わら帽子、暑い陽射し、田園風景、夏休み、モラトリアム期間、死、静寂など)と強烈にリンクする。言葉選びというより詩の組み合わせの仕方がかなり上手くていいフレーズばかりだ。学生時代に聞いていたら間違いなくハマっていただろう。

 


そんな感じでナンバーガール聞きながら煙草を吸い漫画を読みながらなんとなしに外の雰囲気が知りたくなって窓を開けると本当に夏だった。7月の中旬であるので当然のことである。市井の人々の肉の焼ける音がした。陽射しが強烈すぎて俺は溶けてバニラになった。窓を閉めようとするとなかなか上手く閉まらなかった。理由も分からず試行錯誤しているとどうやら遮光カーテンが挟まっているようだった。遠くからは子供達がはしゃぎ回る声がした。10分ほどかけて窓を閉め終わると途方もない虚無感に包まれた。周りの人間は夏であることを理由に様々な種類の代え難い経験をしているのに俺は窓が閉まらず36℃の陽射しの中、身体の半分がバニラになりながらもがいていたのが虚しかった。そんな気持ちを引きずりながらAM2:00を過ぎた。明日は特に予定もないがまたデカい音でナンバーガールを聞こうと思う。気づかなくても俺は夏の真ん中にいた。明日は中古の戦車を拾って街を徘徊したい。